当院で処方可能な高山病予防薬
登山者だけではない高山病
スイス、南米、中国雲南省など、登山をしなくても高度の高い旅行先では、高山病にかかるリスクが高いです。予防対策をしっかり整えてから出発しましょう。
観光地として人気のウユニ塩湖のボリビアの首都ラパスにある空港は標高4,000mの場所にあります。富士山よりも高い場所に着陸しますので、頭痛と吐き気を感じたら高山病の可能性があります。
南米随一の観光地マチュピチュ遺跡は標高2400m、観光の基点となるふもとのマチュピチュ村(旧名アグア・カリエンテス)は標高2000mとそう高くはありませんが、マチュピチュに行くには標高3400mにある古都クスコまで飛行機かバスで行き、そこからバスと列車を乗り継いで行くのが一般的です。日本からのツアーの大部分は、ペルーの首都リマから、飛行機でクスコへ向かい、そこで一泊してからマチュピチュに向かいます。飛行機で高地に入ると激しい頭痛や吐き気など、高山病になってしまう人も少なくありません。
このような方は気を付けて!
ヨーロッパのアルプス・南米のアンデス地方・中国雲南省を旅行する方、グループツアー参加者、70歳以上の高齢者、体力を過信している若者
高山病とは
高山病とは、高度2500m以上(70歳以上の高齢者は高度2000m以上)での酸素不足が招くトラブルの総称です。一般の旅行者は登山目的でなければ高山病にならないと錯覚されますが、2500m以上であれば、観光目的でも発症する可能性はあります。例えば、南米で3000m以上の高地にある空港に飛行機が到着したり、スイスでケーブルカーや登山バスで高地へ移動する際に高山病になることがあります。
世界の標高
高山病の種類
高山病には山酔い、高所肺浮腫、高所脳浮腫の3つがあります。高山病の90%以上はこの山酔いで、命に別状はありませんが、放置すると高所肺浮腫、さらには高所脳浮腫となり、死に至ることもあるので、充分注意が必要です。
山酔い Mountain sickness
高山病の初期症状です。頭痛、嘔吐又は吐き気、疲労感や脱力感、立ちくらみやめまい、不眠といった症状が特徴です。これらの症状が感じられたら、速やかに高度を下げてください。
高所肺浮腫 Pulmonary Edema
肺にむくみのでる高所肺浮腫になると安静にしていても呼吸困難となり、咳、ゼーゼーする、歩行困難、全身の脱力感などが加わります。気圧の低下により、血管から水分が出てくると考えると、理解し易いです。
高所脳浮腫 Cerebral Edema
脳にむくみのでる高所脳浮腫は死の一歩手前の重症状態で、運動失調、思考力・判断力の低下、精神錯乱がおき、やがて昏睡状態となり死亡します。
高山病を予防するには
高山病の予防にはゆとりのある日程を組むことが大切です。時間をかけて徐々に高度を上げていけば、空気の薄い状態、気圧の低下にも体が慣れます。しかし、海抜3,000m以上の空港に着陸する南米のツアーや、自動車などで短時間に高度を上げる場合には、予防薬を使用しましょう。
欧米でポピュラーなのが、アセトゾラミド(商品名:ダイアモックス)という薬です。この薬は脳の血管を拡張して血流を増やし、脳の酸素不足を改善する働きと、呼吸中枢を刺激して全身の低酸素状態を改善する効果があります。但し、本剤を服用していても急速に高度を上げると高山病に陥ることもあります。あくまでも高山病の初期症状として「山酔い」を予防する程度であり、過信することは避けてください。症状を感じたら、高度を下げるようにしましょう(500mでも800mでも高度が下がると楽になります)。服用方法は、高地に到着する前日から到着後3日までの4日間、1回125mg(2分の1錠)を1日2回服用すると高山病の予防になります(12時間毎に服用する)。夕方の服用を続けると呼吸が楽になり、睡眠を助けます。
高山病にかかったら
高山病の症状を感じたら、すみやかに高度を下げるのが最善の策です。症状があるうちは、それ以上高い所へ行くと大変危険です。ツアーでは「迷惑をかけるから」と具合が悪くても言い出しにくいこともありますが、症状が悪化してからのほうが、より多くの迷惑をかけることになります。少しでも気分が優れないとか頭痛を感じたら、症状が軽いうちに添乗員やガイドに申し出ましょう(頭痛は、普段使う頭痛止めを使って結構です)。
応急処置は酸素の吸入とアセトゾラミドの服用が挙げられます。治療薬としてこの薬を使う場合には、予防時の倍の1回250mgを1日に2回服用して下さい(1日に2錠)。
脳浮腫にはステロイド・ホルモンの内服が有効です。肺浮腫の特効薬はなく、特殊な人工呼吸器が必要になります。
高山病予防薬の種類と服用方法
ダイアモックス錠250㎎(国産)
1回半錠(体格の大きい人は1錠)内服
高所(2500m以上)に行く1日前より内服開始
販売元:三和化学研究所
高所滞在中は毎日服用し、下山後に内服終了する。
長期滞在の場合は4~5日間内服し、高所に順応すれば内服中止してもよい。
副反応・禁忌
副作用として一般的なのは、手・足・口唇のシビレ・ジンジン感・震え、ときに味覚の変化・耳鳴です。まれに嘔気・頭痛、極端な例として霧視の極端な例として霧視の報告もありますが、服薬中止で回復します。頻尿も見られることがありますが、本剤はもともと利尿剤なので、頻尿になることもあります。
高血圧や心臓病の治療を受けておられる方、てんかんの治療を受けられている方は注意が必要です。
本剤は硫黄を含む薬剤なので、硫黄化合物にアレルギーの人は飲んではいけません。
本剤について
ダイアモックスは、腎臓から重炭酸塩の排泄を促し、体液を酸性にするので、過換気(低酸素環境においてより多くの酸素を取り込もうとする努力)の結果によりおこる呼吸性アルカローシス(体液アルカリ化)を是正し、呼吸を促進させる作用があります。それによって、高所でみられる睡眠中の間歇呼吸を緩和します(睡眠が楽になる)。 脳髄液を酸性側に保ち、脳浮腫を軽減するとされています。
本剤は、普通24~48時間かかる高所順応を早める(12~24時間に短縮する)効果を期待できます。
高山病予防薬処方のご予約について
トラベル科は予約制ですが、当日予約も可能です。
お電話またはWEBからご予約ください。
ご予約はこちらから
受付時間 9:00~18:00
診察受付時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
午後 10:00~13:00 | ● | ● | ● | ● | ● | × | × |
午後 14:30~17:30 | ● | ● | ● | ● | ● | × | × |